相続相談の基礎知識と対応方法

相続相談は、”何から手をつければいいのか分からない”という段階で始めても問題ありません。実際には、遺産の金額が大きい場合だけでなく、相続人同士の関係が不安な場合、不動産がある場合、借金の有無が分からない場合など、早めに確認しておいた方がよい場面が多くあります。
特に相続は、死亡届の後に自然に片付くものではなく、戸籍収集、財産調査、遺言の有無の確認、遺産分割、名義変更、税務対応など、複数の手続が並行して進みます。”まだ揉めていないから大丈夫”と考えて後回しにすると、後から手続が複雑になることも少なくありません
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1. 相続相談はいつするべき?何を相談できる?
相続相談は、相続開始後だけでなく、被相続人が元気なうちの生前対策や、遺言作成の段階でも行うことができます。相続発生後に慌てないためにも、”相談するタイミングが早すぎる”というより、”気になった時点で整理を始める”という考え方が実務的です。
相続相談は死亡後すぐでないと遅い?初期段階でも相談できる?
相続は、民法882条により、人が死亡した時に開始します。つまり、亡くなった時点から法的には相続が始まっており、その後の対応を放置すると、相続放棄や遺産分割に関する判断が遅れやすくなります。
一方で、相続相談は”すべての資料がそろってからでないとできない”ものではありません。戸籍が未収集でも、不動産の評価が未了でも、まずは”誰が相続人になりそうか””借金がありそうか””遺言があるか”を整理するだけで、次にやるべきことが見えやすくなります。特に、預金の凍結や葬儀費用の負担、同居親族による財産管理など、初動で不安が出やすいケースでは、早期相談の意味が大きいです。
相続相談ではどこまで聞ける?財産が分からない場合は?
相続相談では、遺言書の確認、相続人の範囲、遺産分割の進め方、不動産や預貯金の調査方法、相続放棄の要否、税理士との連携が必要かどうかまで、かなり広い範囲を確認できます。財産の全体像が分からない場合でも、通帳、固定資産税の納税通知書、郵便物、借入関係の書類などから、調査の入口を作ることは可能です。
また、”借金があるかもしれないがはっきりしない”という相談も多くあります。この場合は、安易に遺産分割を進める前に、負債の有無や保証債務の有無を確認することが重要です。相続はプラスの財産だけでなくマイナスの財産も承継対象になるため、気になる事情があるなら、相談段階で必ず共有しておいた方が安全です。
2. 相続人や遺産の内容でもめそうな場合はどうなる?
相続相談で多いのは、”法律上の相続人が誰か分からない”という問題より、”家族の認識が一致していない”という問題です。前婚の子がいる場合、内縁関係がある場合、長年連絡を取っていない相続人がいる場合など、戸籍上の確認と感情面の整理がずれやすく、早めの見通し整理が重要になります。
相続人が多い場合・疎遠な親族がいる場合はどう進める?
相続手続では、原則として相続人全員の関与が必要になる場面が多くあります。たとえば遺産分割協議は、共同相続人の一部だけで進めても足りず、全員を前提に話を進めなければ後で無効争いにつながるおそれがあります。民法907条は、共同相続人が協議で遺産分割をすることを定めており、”一人でも抜けたまま話をまとめる”という進め方は危険です。
疎遠な相続人がいる場合は、まず戸籍等で相続人を確定し、連絡先を把握し、どの財産についてどのような分け方を提案するのかを整理します。最初から感情論で話を始めるとまとまりにくいため、財産目録、評価資料、遺言の有無、過去の贈与の有無などを客観資料としてそろえることが、相談段階でも非常に重要です。
出典:民法907
未成年の相続人がいる場合や不在者がいる場合はどうなる?
未成年の子が相続人で、親も同時に相続人になる場合には、利益相反の問題が出ることがあります。裁判所も、親権者と未成年者が共同相続人になる遺産分割協議は利益相反行為に当たり得るとしており、この場合は特別代理人の選任が必要になることがあります。
また、相続人の一人が行方不明で話合いに参加できない場合には、不在者財産管理人の選任が問題になることがあります。裁判所は、不在者財産管理人が家庭裁判所の許可を得て遺産分割等を行えると案内しており、”連絡が取れないからその人を抜いて進める”という処理はできません。
このように、相続相談では単に取り分の話だけでなく、”そもそも有効に手続を進められる状態か”を最初に見極める必要があります。
3. 遺言がある場合・ない場合で相続相談の内容は変わる?
相続相談では、遺言書の有無で進め方が大きく変わります。もっとも、遺言があれば必ず円満に終わるわけでもなく、内容が曖昧な場合や、遺留分との関係が問題になる場合には、むしろ新たな争点が出ることもあります。
遺言書がある場合はそのまま従えばいい?争いになることはある?
遺言書がある場合、まずは形式や内容を確認し、どの財産にどう触れているのかを整理します。遺言で各財産の承継先が明確なら、その内容に沿って名義変更等を進めやすくなりますが、記載が抽象的だったり、一部財産しか触れていなかったりすると、結局は追加の協議が必要になることがあります。
また、遺言があっても、他の相続人に最低限保障される利益として遺留分が問題になることがあります。たとえば”長男に全部相続させる”という内容であっても、他の相続人側から金銭請求の問題が生じることは珍しくありません。相続相談では、”遺言があるから終わり”ではなく、遺言の有効性、執行のしやすさ、遺留分の見通しまで確認することが大切です。
遺言がない場合はどう分ける?話合いがまとまらない場合は?
遺言がない場合は、法定相続分を一つの目安にしながら、相続人全員で遺産分割協議を進めることになります。民法900条には法定相続分の基本ルールが定められていますが、実際には”同居して介護していた””生前に援助を受けていた””不動産を誰が引き継ぐのか”など、単純な割合計算では解決しない事情が多くあります。
話合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することができます。裁判所は、遺産分割について話合いがつかない場合には調停または審判の手続を利用でき、調停不成立の場合は自動的に審判手続が開始されると案内しています。
つまり、相続相談の段階で”すでに家族関係が悪い””連絡しても返事がない”という事情があるなら、最初から裁判所手続を見据えた資料整理をしておく方が現実的です。
出典:民法900条
4. 相続相談で特に注意したい期限や見落としは?
相続相談で最も注意されやすいのは、相続放棄や限定承認の期限、名義変更の遅れ、相続税申告の要否、不動産の扱いです。特に、”まだ決めていないだけ”と思っていたことが、法律上は重要な選択期限に関わっていることがあるため、初回相談でスケジュール感を確認しておくことが重要です。
借金がある場合は相続放棄できる?期限を過ぎたらどうなる?
相続放棄は、民法915条により、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないのが原則です。この期間内に、相続するのか、放棄するのか、限定承認するのかを判断する必要があります。
そのため、借金の存在が疑われる場合や、事業関係の負債・保証債務がありそうな場合は、”相続人同士で少し様子を見る”ではなく、すぐに資料収集と方針検討を始める必要があります。なお、事情によっては熟慮期間の伸長が問題になることもありますが、何もしないまま3か月を過ぎると不利になりやすいため、少しでも不安があれば早期相談が不可欠です。
相続相談を後回しにすると何が困る?不動産だけある場合は?
相続相談を先送りすると、預金の払戻し、不動産の名義整理、固定資産税の負担、空き家管理、他の相続人との認識違いなどが積み重なり、後から余計に整理が難しくなります。特に不動産しか主な遺産がない場合は、”誰が住むのか””売るのか残すのか””管理費や税金を誰が負担するのか”が争点になりやすく、現金よりむしろ話がまとまりにくい傾向があります。
また、相続後の財産処分や一部相続人による単独使用が長引くと、他の相続人の不満が強まりやすくなります。相談の段階で、不動産の評価方法、利用希望者の有無、売却可能性、共有状態のリスクなどを整理しておくと、感情的対立を少し抑えやすくなります。
相続相談は、問題が大きくなってから行く場所ではなく、問題を大きくしないために使うものだと考えておくと分かりやすいでしょう。
相続相談では、”法律上どうなるか”だけでなく、”自分の家族の場合に何が争点になりそうか”を具体的に洗い出すことが大切です。とくに、相続人が多い場合、未成年者がいる場合、行方不明者がいる場合、借金の有無が不明な場合、遺言の内容に偏りがある場合などは、一般論だけでは処理しにくいケースです。
まずは、被相続人の死亡日、家族関係、遺言の有無、分かっている財産と負債、不安に感じている点を整理して相談につなげると、相続手続の見通しが立てやすくなります。

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