事実婚はどうなる?内縁の解消で知っておきたい財産分与・慰謝料・手続

事実婚の関係がうまくいかなくなったとき、“結婚していないのだから何も請求できないのではないか”“別れると言われたらそれで終わりなのか”と不安になる方は少なくありません。たしかに、法律上の婚姻とは異なり、戸籍上の夫婦ではない以上、すべてが同じ扱いになるわけではありません。しかし、日本の裁判実務では、事実婚、いわゆる内縁関係について、夫婦としての実態がある場合には一定の法的保護が認められてきました。実際に、裁判所は内縁関係の解消について、財産分与や慰謝料を一緒に話し合える調停手続を用意しており、判例上も、正当な理由のない破棄に対する損害賠償や、財産関係の清算が認められる方向で整理されています。
この記事では、離婚分野の視点から、事実婚の解消時に問題になりやすいポイントを、請求できる内容、認められやすい条件、進め方の順で整理して解説します。
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1. 事実婚が離婚問題として扱われるのはどんな場合か
事実婚は、単なる交際や同棲とは違い、“夫婦として共同生活を営んでいたか”が重要になります。離婚実務でいう事実婚は、届出こそしていないものの、実態として婚姻に準じる関係があったかどうかが出発点です。
同棲していただけでも事実婚といえる?
同居していたという事情だけで、すぐに事実婚になるわけではありません。生活費の分担、周囲への夫婦としての紹介、継続的な同居、家計の一体性など、共同生活の実態が重視されます。判例も、内縁を“男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合”と捉えており、形式より実質が見られます。
住民票や賃貸契約の名義が別でも認められる?
名義が別だから直ちに否定されるとは限りません。仕事や住居事情から形式上は別管理でも、実際には生活基盤を共にしていたと認められることがあります。反対に、名義だけ同じでも、実態が伴わなければ事実婚と評価されにくいため、証拠は“生活実態”に結び付けて集めることが大切です。
事実婚かどうかで争いになったら何が証拠になる?
代表的なのは、住民票の続柄記載、生活費の送金記録、賃貸借契約書、保険の受取人指定、写真、メッセージ、親族や友人への紹介状況などです。特に解消時の紛争では、あとから相手が“ただの交際だった”と主張することが多いため、交際の証拠ではなく、夫婦同然の共同生活を示す資料が重要になります。最初の相談段階で、時系列に沿って整理しておくと、その後の交渉や調停でも使いやすくなります。
2. 事実婚を解消するときに請求できるものは?
事実婚の解消では、主に財産分与と慰謝料が問題になります。裁判所も、内縁関係調整調停の中で、解消そのものだけでなく、財産分与や慰謝料について一緒に話し合えると案内しています。
財産分与は事実婚でも認められる?
はい、一定の場合には認められます。裁判例は、財産分与の本質を“共同生活中の財産関係の清算”と捉え、第三者の身分関係に直接影響しない以上、内縁にも認めるのが相当だとしています。つまり、籍を入れていなかったとしても、共同生活の中で形成した財産であれば、名義だけで一方のものと決まるわけではありません。
相手名義の預金や不動産しかない場合はどうなる?
相手単独名義であっても、実質的に二人で築いた財産なら、清算対象になる余地があります。事実婚では、法律婚以上に“名義”を盾に争われやすいため、購入時の資金負担、住宅ローン返済、家事労働による貢献、生活費分担の状況などを具体的に示すことが重要です。名義が相手だから無理だと早く諦めてしまうと、本来主張できた取り分まで失うおそれがあります。
慰謝料はどんなときに認められる?
事実婚の解消それ自体で当然に慰謝料が発生するわけではありません。もっとも、最高裁判所は、内縁も法律上保護される生活関係であり、正当な理由なく破棄された場合には不法行為責任を肯定できると示しています。相手の一方的な別離、不貞行為、暴力・著しい侮辱など、精神的苦痛を生じさせる事情があるかがポイントです。
3. 事実婚の解消で見落としやすい争点は?
事実婚の相談では、“別れるかどうか”よりも、“別れた後に何が残るか”で困ることが多くあります。特に、生活費、病気の治療費、別居後の費用負担、相手の不貞といった問題は、証拠不足のまま放置されやすい論点です。
別居したあとに使ったお金も請求できる?
内容によっては可能です。最高裁判所は、内縁が婚姻に準ずる関係であることを前提に、民法760条の趣旨を内縁にも及ぼし、別居中に生じた医療費について相手方の分担を認めています。別居したからすべて自己負担になるとは限らず、何のための支出か、共同生活との関係があるかが問われます。
相手に不貞があった場合、事実婚でも請求できる?
夫婦に準じる共同生活の実態が認められるなら、事実婚でも不貞を理由とする慰謝料請求が問題になります。実際、裁判例でも、内縁関係が婚姻関係に準じるものとして保護されることを前提に、内縁破棄や不貞に伴う損害賠償が争われています。もっとも、交際関係の段階にとどまると保護の程度は下がるため、“事実婚の立証”と“不貞の立証”の両方が必要になります。
相手から“そもそも夫婦ではなかった”と反論されたら?
事実婚の紛争では、ここが最も典型的な争点です。だからこそ、別れ話が出た後ではなく、その前から生活実態を示す資料を確保しておく必要があります。やり取りを消してしまったり、家計資料を持ち出せないまま別居したりすると、あとで請求の土台自体が崩れることがあるため、感情的に動く前に証拠の整理を優先した方が安全です。
4. 事実婚を解消したいとき、どう進めるのが現実的か
事実婚の解消では、いきなり訴訟を考えるより、まずは証拠をそろえ、請求内容を整理し、必要に応じて家庭裁判所の手続を使う流れが現実的です。裁判所は、内縁関係調整調停により、解消の可否だけでなく、財産分与や慰謝料も一緒に話し合えると案内しています。
いきなり訴えるより先に何をするべき?
まず確認すべきなのは、事実婚の成立を示す証拠、共有財産の資料、相手の問題行為に関する証拠の3つです。そのうえで、何を求めるのかを整理します。単に“納得できない”では交渉は進みにくく、“財産分与を求めるのか”“慰謝料も求めるのか”“住居をどうするのか”を分けて考えることが重要です。
調停は使える?費用はどのくらい?
使えます。裁判所は、内縁関係の解消について話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の内縁関係調整調停を利用でき、そこで財産分与や慰謝料も一緒に協議できるとしています。申立費用の目安として、裁判所の案内では収入印紙1200円分と郵便切手が必要とされており、少なくとも手続に着手する段階の負担は比較的抑えやすいといえます。
弁護士に相談した方がよいのはどんな場合?
相手が事実婚自体を否定している場合、財産の名義がほぼ相手側に偏っている場合、不貞や暴力が絡む場合、別居後の生活不安が大きい場合は、早めの相談が有効です。事実婚の紛争は、法律婚よりも“前提事実”から争いになりやすいため、請求の中身以前に、どの資料で何を立証するかの設計が重要になります。交渉だけでまとまりそうに見えても、初動での整理次第で結果が大きく変わります。
5. 事実婚の解消で押さえておきたい考え方
事実婚は、法律婚とまったく同じではありませんが、“何も守られない関係”でもありません。裁判実務では、共同生活の実態がある内縁について、財産関係の清算や、不当な破棄に対する救済が認められてきました。
“籍を入れていないから請求できない”は本当?
その理解は正確ではありません。届出がないために法律婚と同一の効果が当然に生じるわけではない一方で、共同生活の実態に関する部分では、婚姻に準じた保護が認められる場面があります。事実婚の解消では、請求できるかゼロかで考えるのではなく、“何が、どこまで、どの証拠で認められるか”で考えることが大切です。
事実婚の別れ話で感情的に動くとどうなる?
証拠を失いやすく、請求の整理も難しくなります。特に、同居先から急いで出る、通帳や契約資料を確認しない、メッセージを削除する、といった行動は後で不利になりやすいです。相手との関係が悪化していても、まずは資料の確保と時系列の整理を優先する方が、結果として自分を守りやすくなります。
最後に何を基準に動けばいい?
基準は“夫婦としての実態があったか”“共同生活の中で何が形成され、何が壊されたか”です。事実婚の問題は、感情のもつれとして片付けられがちですが、実際には財産と生活の清算という現実的な問題です。だからこそ、別れるかどうかだけでなく、別れた後に困らないための準備まで含めて考える必要があります。

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